僕の主張は、IPv6 を普及させるには(Internetを延命させるには)、必要以上にアドレスを保有している組織(キャリア・ISP・企業・大学等)に対し、アドレスを返却・節約させるメリットを作ることと、コンテンツを提供する側が率先して IPv6 に対応していくべきだということです。
現在話されているキャリアグレード NAT などの議論は、アドレス枯渇の問題を通信事業者の中で止めようとしており、コンテンツ提供側はなんら費用を払わないでいようとしている行動であり、インフラただ乗りのあげく、整備すらキャリア側に押しつけようとするコンテンツ提供側の横暴に他なりません。将来的に十分スケールするキャリアグレード NAT ができてしまった場合、そのコストを負担するのはキャリア側だけとなり、コンテンツ提供側はずっと IPv4 のみでサービスを提供するという状況が起こりえます。
この状況を改善するための方法を僕なりに考えてみました。
IPv4 アドレスの取得・維持に対する抑止を強くする
JPNIC は現在各組織から徴収しているIPアドレス維持料のうち、IPv4 の IPアドレス維持料を対数比例モデルではなく、指数比例モデル(もしくは線形モデル)に変更し、
必要以上に IP アドレスを保持している組織に対する制裁・抑止効果を高める。一方、IPv6 の IP アドレス維持料は現状の対数比例モデルを維持し、IPv6 へ移行するコストメリットを作る。
これにより、規模の大きな(アドレスをより多く持っている)組織の方が枯渇問題を楽観できる状態を改めることができると考えます。
IPアドレスを必要以上に保持している場合
現在の JPNIC のアドレス維持料のモデルでは、アドレスを大量に持てば持つほど、アドレス1つあたりの単価が安くなり、必要以上のアドレスを取得しようとする行為を肯定することになります。実際、不合理なアドレスの割り振り例も存在します。
たとえば、一例を挙げると2005年当時、ソフトバンクBBへの「/8」の割り振りは妥当 と言われていた ソフトバンクBB は子会社の BBTEC (BBテクノロジー)1が持つアドレスのうち、126.240.0.0/12 (16分の1) を、日本での iPhone 用のアドレスブロックとして 2008年になってから利用開始しました。これは、当該ブロック(126.0.0.0/8) が2008年の段階で最低でも 6.25% 未使用であったことを示す上に、当該アドレス帯域(/8)がまだ利用され切っていないことすら伺わせます。
事実、現時点で広告されている 126.0.0.0/8 以下の prefix は、route-views で見る限り、下記参考資料の 66prefix のみです(うち1つは/8)。つまり、internet には使わないが、ユニークなアドレスが必要だということがない限り2、約 190 の /16 が、現時点で広告されていないことになります。当然、2005年の段階で、Vodafone を買収3 し、端末に global アドレスを割り振る(?) iPhone を発売する4 ことなどをアドレス割り振りの申請理由にできるはずがありません。通常 JPNIC でのアドレス割り振りに関しては、1年先までの需要予測を元に申請を行い、1年先までの需要を満たす分のみのアドレスの割り振りが行われます。2005年の段階で、/8 を割り振られたという事実は、虚偽の申請をして5 いた、もしくは BB テクノロジーと APNIC との間で何らかの6 やりとりがなされた可能性があります。
このように、アドレスの割り振りが正しく機能していなかったと考えられる点が1つ。
吸収・合併・グループ企業などにより、アドレスの余剰が生じている場合
等7、ISP の統廃合により、アドレスに余裕が生まれます。これらの企業は内部でネットワークの統合を行うことにより、アドレスの余剰を生むことができます。その後、アドレスの追加割り振りを適正に行っていて、現在は適切な量の IP アドレスのみを保有していることも考えられますが、合併で増えた分はそのままプールした上で、新たに IP アドレスの追加割り振りを行っている可能性も考えられます。
- NTT グループ (NTT(plala,wakwak), NCOM(Verio,OCN,Vipalette,QUOLIA,MEGAX,とんとんみ~), NTT-DATA(Dreamnet,InterVia), NTT-PC(Infosphere))
- ソフトバンクグループ (ソフトバンクBB(Yahoo!BB),ODN,ソフトバンクモバイル)
- イー・アクセスグループ (イー・アクセス(AOL), イー・モバイル,アッカ(?))
等8、同一企業グループ内で ISP 事業を行っている会社の場合も、ネットワークを統合すればアドレスの余剰が生まれます9。
このように、統廃合によってアドレスの余剰ができ、かつそれらのアドレスを利用する目処も無い10 としたら、それらのアドレスは死蔵されていることになります。
このような余剰・死蔵されたアドレスに対して、ペナルティの意味でアドレス維持料を上げることは効果のあることだと考えます。
適度なキャリアグレードNATを用意する
ISPやキャリアは、完全なキャリアグレード NAT の議論をしがちですが、完全なものをつくってしまったら、それは IPv4 の延命どころか、IPv4 から IPv6 への移行にストップをかけてしまうことになります。コンテンツ提供側は何の負担もすることなく、キャリアが勝手に v4 へトランスレートしてアクセスしてくる網を作ってくれるのですから、IPv6 への移行をする必要が無くなります。
適度な NAT とは
先の資料の14ページ移行にあるとおり、1クライアントに対して数十セッション程度しか NAT をしないサービスを指します。このサービスは、欠点ではなく、むしろメリットと考えます。
提供するサービスを分ける
上記の’適度なNAT’を含めた、2タイプ11 のサービスを作ります。
- 1. NATをせず、IPv4 global アドレス (と IPv6 global アドレス) を割り当てるサービス
- 2. ‘適度なNAT’ と、IPv6 global アドレスの2つを割り当てるサービス(1. よりも安価)
ユーザがどのサービスタイプを選ぶかは自由ですが、仮に多くのユーザが、2. のサービスを選択した場合、コンテンツ提供事業者は困ります。現状のように複数の TCP セッションがはれることが前提として作られたアプリケーションが利用できなくなるからです。すると、コンテンツ提供事業者は、サイトが(完全に)見れない・意図した通り動作しないなどのクレームを受けることになり、
- ユーザに、キャリア・ISPの上位サービスに入るよう勧める(キャリアの収益増になり、’適度なNAT’設備の設備投資をまかなえます)
- 自社サービスの使用するTCPセッション数を削減するようにシステムを改修する(工数がかかります)
などの対応を迫られることになります。特に、改修にともなうシステム工数がかさむようになればなるほど、IPv6 に対応した方がコストが安いという結論を導いてくれる可能性が高いと考えます。
この際、無尽蔵に IPv4 global アドレスを配ることができるキャリア・ISP の存在を抑止するためにも、JPNIC および APNIC12 による IP維持料の指数化(線形化)が必須と考えます。
以上、長文でしたが、1人の通信事業者側の立場の人間からの提言でした。
欠点は多いでしょうが、指摘いただければ幸いです。
参考:
ソフトバンク子会社のソフトバンクBB(当時BBテクノロジー)が所持している ClassA アドレス。
$ whois 126.0.0.0/8 % [whois.apnic.net node-1] % Whois data copyright terms http://www.apnic.net/db/dbcopyright.html inetnum: 126.0.0.0 - 126.255.255.255 netname: BBTEC descr: Japan Nation-wide Network of Softbank BB Corp. country: JP admin-c: ST222-AP tech-c: ST222-AP mnt-by: APNIC-HM mnt-lower: MAINT-JP-BBTECH status: ALLOCATED PORTABLE remarks: -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-++-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ remarks: This object can only be updated by APNIC hostmasters. remarks: To update this object, please contact APNIC remarks: hostmasters and include your organisation's account remarks: name in the subject line. remarks: -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-++-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ changed: hm-changed@apnic.net 20050208 source: APNIC
126.0.0.0/8 のうち、広告されているもの (route-views調べ)。
* 126.0.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.0.0.0 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.1.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.2.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.3.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.4.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.5.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.6.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.7.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.8.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.17.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.18.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.20.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.21.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.22.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.23.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.24.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.30.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.64.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.65.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.66.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.67.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.68.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.69.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.70.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.71.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.72.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.73.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.80.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.81.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.83.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.84.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.85.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.86.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.87.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.96.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.97.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.98.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.99.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.100.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.101.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.102.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.103.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.104.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.105.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.106.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.112.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.113.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.127.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.128.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.240.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.241.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.242.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.243.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.244.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.245.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.246.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.247.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.248.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.249.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.250.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.251.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.252.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.253.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.254.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i * 126.255.0.0/16 207.46.32.34 0 8075 4725 17676 i
- 当時、現在はソフトバンクBB株式会社 に合併。 [↩]
- IX を開く。GRX で利用するなど。 [↩]
- 2006年 [↩]
- 2008年 [↩]
- 言ってしまえば、近い将来(2005年当時から5~6年先)にIPv4アドレスは枯渇するから、取れるときに取ってしまえと言うようなことが、ソフトバンク内で起きたということが邪推されてしまうのです。 [↩]
- 金銭的な? [↩]
- 他にもあるのでしょうが、ちょっと記憶から出てきません [↩]
- 他にもあるのでしょうが、ちょっと記憶から出てきません [↩]
- もちろん、これらは同一グループであっても、同一企業ではないので、ネットワークの統合は難しいことが考えられます。 [↩]
- ユーザ増が見込めないなど。 [↩]
- 実際にはもっと細分化してもよいでしょう [↩]
- というか NIC 全体 [↩]
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